Interview インタビュー

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日本語教師インタビュー

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日本語教師
萩本牧子さん
Ms Makiko Hagimoto

横浜元町生まれ。桜蔭学園から国際基督教大学(ICU)へ進学。大学3年の時に、米国ペンシルバニア大学 (University of Pennsylvania) に交換留学し、アイビーリーグ校の素晴らしい教育を肌で経験する。
ICU卒業後に渡米。在ニューヨーク日本国総領事館勤務の後、長年米国各地で生活する。
2011年、東日本大震災直後に帰国。

現在の仕事内容を教えてください

都内2か所で、社会人の外国人に日本語を教えています。
フィリピン大使館では、大使館員対象の日本語指導を初級レベルの11名のクラスで行うほか、英語を使っての日本文化紹介のイベントを、年に数回開催しています。
もうひとつの指導先は Nokia Solutions and Networksという企業です。こちらでは、ビジネスマンを対象に、マンツーマンクラスで初級レベルの日本語指導を行っています。
それから、期間限定ですが、日本留学試験の小論文の採点と、マンツーマン家庭教師として、成人の日本人を対象に月に数回英語も教えています。

日本語教師を目指そうと思ったきっかけと、道のりを教えてください

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思い返すと、大学在学中に中高生に英語を教えるアルバイトをしたのが「教える」という経験の始まりだと思います。でも、「教師」という職業を目指そうと思ったのは、ずっと後になってからですね。
大学卒業後に渡米し、マンハッタンにある日本総領事館で査証発給等の業務に就いていましたが、結婚し、夫の仕事の関係でロードアイランド州の、プロビデンスという小都市に引っ越しました。そこで何とか日本人であることを活かす仕事に就きたいと考え、プロビデンスにあるアイビーリーグ校のブラウン大学で、日本語科の教授をしている方にコンタクトをとったのです。
約1年間、この教授のアシスタントや教材開発のお手伝いをしたところ、翌年に入門クラスを担当させてもらうことになりました。その時、学生を指導すると、彼らがすぐさま学んだことを吸収し、習得していく様子を見て感じた、指導者としての充実感が、プロの日本語教師になろうという気持ちを抱くようになったきっかけだと思います。
その後、子育てに年月を費やし、長い間教育の現場からは遠のいていましたが、日本に帰国してから、もう一度語学教育に携わりたいという気持ちが強くなり、日本語教師となるための資格を取得しました。

日本語教師の仕事に英語力は必要ですか

日本で日本語を教える場合、民間の日本語学校等では、媒介語をいっさい使わない直接法を使って教える方法をとります。つまり、日本語以外は話さないということです。
私の場合はそうした一般的な日本語学校の日本語教師という立場とは少し違い、英語を理解する成人を対象に教えていることから、新しい文型の導入、文法や用法の説明は、英語で行なっています。ですから、個人的には、日本語の文法を英語で説明できる英語力のレベルというか、語彙をはじめとするスキルは必要です。
また、外国大使館と外資系企業に出向いて日本語を教えていることから、担当者との事務的な連絡も英語で行ないます。難解な英語を理解したり話したりする必要はないので、英語レベルということでしたら、ACTFL(American Council on the Teaching of Foreign Language)のGlobal Can-do BenchmarkのAdvanced Lowレベル程度で十分でしょう。

その英語力はどのように習得し、維持しているのですか

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ICUは、創立時から日英両語を公式語とするバイリンガリズムが貫かれており、リベラルアーツ英語プログラムにより、個々がレベルに応じて、卒業までに必要とされる言語運用能力を身につけることになっています。私もその日英バイリンガル教育を受け、さらにアメリカ留学、滞在を経て、上級レベルの英語力を身につけました。帰国後友人に勧められてTOEICを受験し、高得点を取得しています。
現在の英語力維持法は、テレビで放送される海外のニュース、映画、ドラマを音声変換して英語で見たり聞いたりする。英語の小説を読む。日本在住の英語圏の友人と交流する。SNSやメールで海外の友人と交信する、といったことですね。バイリンガルの娘と英語でやりとりすることも日常的です。
なにか特別なことをして英語力を維持するという感じではなく、日常の中にふつうに英語の環境があるので、それを最大限利用し、日本語に偏らない生活を心がけています。

日本語教師の仕事に、英語力以外に大切な能力、資格、適性はありますか

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日本で外国人に日本語を教えるためには、次のうちひとつを得ていることが必要です。
(1)日本語教師養成講座420時間コース修了
(2)日本語教育検定試験合格
(3) 大学で日本語教育課程 主・副専攻修了
私の場合は(1)と(2)の資格を取得しました。
日本語が母語であることは、日本語教師になるための必須条件ではありません。けれども、高等教育を日本語で受けられるくらいの日本語力は必要だと思います。
大学で日本語を教える場合は(3)、さらに修士課程以上を修了することが望ましいです。

他に日本語教師としての適性として挙げられるのは、なによりも「人が好きな人」であることでしょう。外国語教授法に関しても、従来の機械的なオーラル・リンガル・メソッドに代わって、コミュニカティブ・アプローチが評価されるようになりました。
教室内の活動も、人と人との対話が重視される時代となっています。人と接することが好きな人、スムーズにコミュニケーションをとれる人が向いているといえるでしょう。
さらに、他言語話者に対する偏見、異文化に対する思い込みを排除することが出来ることと、常に相互理解を心がけることが出来る人であることが望ましいといえます。

日本語教師の仕事のやりがいを教えてください

「日本語は難しい」と、日本人はよく言います。けれども、実は他言語に比べて日本語が特に難しいと言える根拠はありません。日本語教師が生徒にきちんと説明し、納得させることができれば、時間はかかっても生徒の日本語は上達していきます。
敬遠しがちな文法であっても、日本語文法は、語形変化も規則的な場合が多く、ほとんどの項目において系統的な説明が可能です。社会人の生徒は特に、系統的な説明をすると興味を持ってくれ、どんどん質問を投げかけてきます。彼らの中に、「もっと深く日本語を知りたい」という、知的欲求が芽生えてくるのが、教師にも伝わってくるのです。そんなときは「この生徒を次の段階に持っていけた」と、嬉しく感じますね。

日本語教師の仕事の苦労する点を教えてください

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社会人を教えているので、彼らの本業が忙しくなると授業がキャンセルされ途切れてしまい、なかなか順調に習得してもらえないことは、悩みの種ですね。また、基本的にアフターファイブの時間帯に授業を受けたいのが社会人なので、日中には仕事が入りません。
日中の仕事としては、JSL(Japanese as a second language)にも関心を持ってはいるのですが、ボランティアベースで教えることになるので、現実的ではないと感じています。
日本の多言語社会化は、年々急速に進んでいると感じます。日本語を母語としない年少者がどんどん増えている現状が日本各地で起こっていて、そのため公立小学校にもJSLカリキュラムが徐々に導入されています。JSLカリキュラムをスムーズに行うためには、「取り出し授業」を教える日本語教師が必要となってきます。この授業がボランティアではなく、報酬が得られる仕事になることが望ましいと思っています。

今後の目標を教えてください

日本語教師の仕事は一生続けられる仕事ですから、私も体力が続く限り教えていきたいと思っています。年齢的に、配偶者のリタイア後を考える時期にもさしかかっていますが、例えば将来的に海外移住するようなことがあっても、外国で日本語を教えるニーズはあるでしょう。最近はスカイプを使って教えることもできますし、日本語教師はどこに行っても続けられる仕事だと思います。

日本語教師を目指している人へメッセージをお願いします

他言語を母語とし、異文化をバックグランドに持つ学習者を教えていくのが日本語教師ですから、私は日本語教師自身も多言語を学習する経験を持ち、異文化を体験しておくことが大変重要だと考えています。ですから、この仕事をしたいと思っている人には、短期であっても、他国への留学や遊学をおすすめします。
自らを異文化の中にどっぷり浸してみて下さい。旅行ではそこまで深く言語や文化とかかわることができないので、無理です。少なくとも数ヶ月間は、異国に住んでみて下さい。差別を受けることもあるかもしれません。偏見を持った目で見られることもあるかもしれません。でも、そういう経験があってこそ、うわべではないところで、本当に学習者の気持ちが分かるはずですし、他の言語を学ぶということの苦労も身を以て感じるはずです。日本語教師を目指すのであれば、一度は日本を出て、異文化コミュニケーションを体験してみていただきたいと思います。

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